基源:ショウガ科(Zingiberaceae)の Amomum xanthioides Wall. の種子の塊である。

 ショウガやウコンなどに代表されるショウガ科植物は、全草に多くの精油を含んでおり、香辛料や薬用に繁用されています。ショウガ科植物は熱帯地域を中心に多くの種類が分布し、私たちの生活に欠くことができない植物群です。一方で、種類が多いことに加え形態が互いに類似していることから分類が困難な植物群で、由来する生薬の原植物の同定が困難な場合があります。漢方生薬などに使用されている芳香性健胃薬である縮砂(シュクシャ)もその一つです。

 植物分類学的にはシュクシャ属とは Amomum属ではなく Hedychium属のことを指します。これは縮砂の原植物が不明であった時期、Hedychium属の植物にシュクシャやハナシュクシャと名付けられたことが理由です。現在でも縮砂の原植物は熱帯地域の山林に生育するため採集者以外の人目に触れる機会が少ない植物です。日本の植物園にも導入されていませんし、写真すら見る機会がほとんどありません。

 中華人民共和国薬典には「砂仁」が収載され、原植物はAmomum villosum(中国名:陽春砂)、A. villosum var. xanthioides(緑殻砂)、A. longiligulare(海南砂)とされています。実際は陽春砂を使用することが多いようです。日本薬局方の縮砂に対応するものはA. villosum var. xanthioides(緑殻砂)に由来する砂仁であり、名称と学名に混乱が認められます。

 縮砂の原植物の形態記載として『図経本草』に「苗、茎は高良姜に似て、高さ三四尺、葉の長さは八九寸、広さ半寸位。三月、四月に花が根の下に開き、五六月に実がなる。その実は五七十個が一穂になり、形は益智に似て円く、皮が緊って厚く、皺があり、粟紋があって外部に細かいとげがあり黄赤色だ。その皮の間に細かい子が四十餘粒ほどづつ一団となって八つに隔たっている。」とあります。このことからも縮砂の原植物は花が根元に咲く特徴を有する Amomum属であることがわかります。

 A. villosum var. xanthioidesはミャンマー、タイ、ラオス、ベトナムなどに自生するショウガ科の多年生草本です。高さ1~2メートルになり、葉身は狭披針形で長さ15~35 cm、全縁、幅2~5 cm、基部は長い葉鞘となります。穂状花序は根茎から直接出る花茎に付きほぼ球形になります。蒴果は球形~楕円球形、表面には柔らかい刺があり熟しても緑色を呈したままです。この成熟果実を乾燥したものが生薬になり、果皮は除去されて種子の塊となっています。長さ1~1.5 cm、径0.8~1 cm、外面は灰褐色~暗褐色を呈しています。種子塊は薄い膜で3つに分かれ、それぞれに10~20粒の種子があります。種子は多角形の粒状で、長さ0.3~0.5 cm、径約0.3 cm、外面には暗褐色で多数の細かい突起があります。種子を砕くと特異な芳香と辛味があります。

 縮砂は健胃、整腸薬として消化器官の機能が衰え、胃部の停滞感、消化不良性の下痢、神経性下痢などに応用されます。『本草綱目』には『医通』の引用として「腎は燥を悪むものでこれを潤すには辛を用いる。縮砂仁の辛を用いれば腎の燥を潤すものだ」とあり、さらに続けて「縮砂は土に属するもので、主として脾を醒し、胃を調え、諸薬を導いて丹田に落付き宿らせる。香わしくてよく薫じ籠り、五臓それぞれの機能を徹底し調和する気を和合し、あたかも天地が土によってその機能発揮の徹底と調和を実現するようなものである」と記載されています。

 過去、日本では伊豆縮砂という名称でハナミョウガ Alpinia japonicaの種子を用いたこともありましたが、品質が良くないという理由で使用されなくなりました。情報や流通が発達した現在でもなお縮砂の原植物が容易に入手できない現状を考えると、改めてショウガ科植物の分類の困難さを理解するとともに、縮砂に相当する生薬を日本国内に求めた先人の努力が忍ばれます。

 

(神農子 記)