基源:ザクロ科(Punicaceae)のザクロ Punica granatum L. の成熟果実の果皮(石榴果皮)及び根皮(石榴根皮)。

 ザクロ科はザクロ属1属からなり2種が知られています。薬用、食用、観賞用として古くから熱帯〜亜熱帯の国々で栽培されてきたザクロは、西南アジアの原産で、冬が寒く夏は暑い半乾燥気候の地域に自生しています。野生状態では刺の多い低木ですが、栽培すると刺は少なくなり高さは6メートルにもなります。葉は対生し全縁で光沢があり、若い枝は狭いコルク質の翼があって4稜をなし、初夏に赤橙色で筒状の花を1個から数個枝の先端につけ、秋には直径6cm前後の果実が実ります。硬い果皮の中に多数の種子があり、種子の外皮は透明な淡紅色、多汁質で甘酸っぱく、生食したり、清涼飲料やアルコール飲料とするほか、香料や着色料など幅広く利用されています。観賞用では、園芸品種として矮小型のヒメザクロや八重咲きのハナザクロがつくられています。

 ザクロの果実は希望や不死を表す象徴として多くの民間伝承に登場します。ギリシャ神話やローマ神話にも見られ、ソロモンの寺院の柱にはヘブライ人によるザクロの果実の彫刻があり、初期のペルシャ織物の図案にも用いられていました。アジアでは種子が多いことから子孫繁栄、豊穣の象徴とされてきました。日本にも古く平安時代以前に渡来しており、種子や果汁に有機酸を多く含むため、銅鏡を磨くのにも用いられていました。

 薬用としてのザクロは、『名医別録』の下品に「安石榴」の原名で収載されています。『博物誌』には「漢の張騫が西域に出使した際に、塗林、安石国の榴種を得て持ち帰った。故に安石榴と名付ける」と記されています。薬効については、『名医別録』には「酸実殻は下痢を療し、漏精を止める。東行根は蚘虫、寸白を療す」と果皮及び根に関する薬効の記載があり、陳蔵器は「東引根及び皮は蚘虫を治すのに煎じて服する。子は渇きを止め、花、葉は乾かして末とし、鉄丹と和して服すれば、一年にして毛髪の色が漆の如く黒く変わる」と、根、根皮、子、花、葉の薬効を記しています。また、陶弘景は「石榴の花は赤くして愛すべきものだ。故に世間で多く植えている。就中外国で珍重し甜と酢の二種あるが、医家ではただ酢きものの殻と根を用いる」、蘇頌も「安石榴はもと西域に生じたもので、今は處々にある。木は甚だ高大でなく、枝柯は幹に附いて地から生えて叢になる。栽培するに極めて増えやすいもので、その條を折って土中に入れておけば生えてくる。花に黄・赤の二色があり、実には甘・酢の二種あって甘きものは食用にし、酢きものは薬に入れる」と記しており、古来、果肉の酸味が強いものを薬用としてきたことが伺えます。

 石榴果皮は不規則な形あるいは半円形の片状で、厚さ2〜3 mm。外側は暗紅色あるいは紅褐色で、あらく、白色の小突起があります。質はもろくて堅く、折れやすく、においは微弱で味は渋く、皮が厚くて紅褐色のものが良品とされています。含有成分としてタンニン類を多量に含み、加水分解によってエラグ酸を生じます。薬効は収斂、止瀉薬として慢性下痢、下血、脱肛、遺精、崩漏帯下などに用いられます。

 石榴根皮は不規則に湾曲しているか、または扁平な片塊で、表面は土黄色であらく、深褐色で鱗片状のコルク皮がついているが、脱落するとまだらのくぼみが残ります。においはわずかで、味は渋く、皮の形が完全で、黄色のものが良品とされています。含有成分はアルカロイドのイソペレチエリンやタンニン類で、回虫、条虫などに対する駆虫薬として用いられます。

 以上、果皮、根皮ともに駆虫、止瀉の作用がありますが、駆虫作用は根の方が強く、下痢症状には専ら果皮が利用されてきました。一方で、根皮は毒性が強く、運動障害や呼吸麻痺などの中毒症状を引き起こすことがあるため、使用には注意が必要です。

 

(神農子 記)