基源:ヤドリギ科(Viscaceae,APG分類ではSantalaceae)のヤドリギ Viscum album L. subsp. coloratum Kom. およびアカミヤドリギ Viscum album L. subsp. coloratum Kom. f. rubroaurantiacum (Makino) Ohwi の葉をつけた茎を乾燥したもの。

 エノキやケヤキなどの落葉樹が冬に青々とした葉を付けていれば,それはヤドリギかもしれません。ヤドリギはニレ科,ブナ科,バラ科,クワ科などの植物に寄生し,水分や無機養分を吸収することによって光合成を行う半寄生植物です。日本にはヤドリギとヒノキバヤドリギの 2 属 2 種が自生しており,果実が橙赤色に熟す品種のアカミヤドリギもあります。この仲間は古来薬用として様々な種が利用されてきました。

 桑寄生は『神農本草経』の上品に「桑上寄生」の原名で収載され,「寄屑」,「寓木」,「宛童」などの別名があげられています。李時珍は「この物は他の木に寄寓して生じ,鳥が上に立ったようだ。故に寄生,寓木,蔦木というのである。」といっています。この「寓木」は寄生植物の総称であり,ヤドリギ科をはじめ地衣類なども含めて寄生と総称されていたものと考えられ,これらを区別するため桑上寄生や松上寄生などという個別名称がつけられていました。

 桑上寄生の形態に関して,陶弘景は「桑上のものを桑上寄生と名付ける。松上のものを方家は亦用いる。楊上,楓上いずれも形類があって一般であるが,但だ根津の因る所の處が異なる。それで各々その樹に随って名付けたのだ。樹枝の間に生じ,根は枝節の内に在り,葉は円く,青赤で厚くて沢があり,折れやすく,旁に自ら枝節を生じる。冬,夏に生え,四月に白い花があり,五月に赤い実があり,大きさは小豆ほどである。處々いずれもあるが,彭城に産するものを勝れたものとする」といっており,詳説されているものはオオバヤドリギ科のマツグミ属植物であると考えられます。また,『唐本注』には「これは多く槲,欅,柳,水揚,楓等の樹上に生じる。子は黄色で大きさは棗子の如くである。惟だ虢州にのみ桑上のものがあり,その子の汁は甚だ黏りがあり,核は大きく小豆に似ている。葉に陰陽がなく,細い柳葉のようで,厚く茎は粗く短い。江南地方の人は,この茎を続断として用いる習わしがあるがまことに相関しないものだ。寄生の実は九月に初めて熟し黄色となる。」とあり,明らかにヤドリギを指していると考えられます。中国の市場では桑寄生の他,槲寄生,柳寄生,柿寄生,北寄生,黄寄生などが存在し,様々な寄生が流通しています。

 ヤドリギは枝茎が円柱形で葉がないか,枝の梢に葉があり,茎は長さ約 30 cm,直径 0.3〜1 cm,表面は黄褐色または灰褐色で,はっきりとした縦じわがあります。茎には節があり,節間は約 3〜5 cm,常に節から 2〜3 個の分枝が出ています。質は軽くてもろく,折れやすく,断面は平坦でなく,繊維は放射線状を呈し,粉状の物が散出しています。葉は枝先に対生し,極めて落ちやすく,葉身は長卵形でやや厚くて光沢があり,革質で少し柔らかく,しわがはっきりしています。味は少し苦く,生薬としては枝が若くて黄緑色で葉があり砕けていないものが良品とされています。含有成分としてオレアノール酸,アビクラリン,イノシトール,ケルセチン,ルペオールなどが含まれており,祛風湿,養血,強筋骨や補肝腎,安胎の効能があり,腰や膝がだるく無力,関節痛,運動障害などの症候に独活,牛膝,熟地黄,当帰,杜仲などと用いる独活寄生湯,独活寄生丸などがあります。 

 ヨーロッパでは幸せを運ぶ木としてセイヨウヤドリギをクリスマスの飾りなどに用いていますが,薬用としての歴史も古く,ヒポクラテスが憂鬱病に用い,パラケルススは癲癇に使用していたとされています。しかし,セイヨウヤドリギには強心配糖体などの毒性の高い化合物が含まれているため注意が必要です。

 なお,ヤドリギ科以外では,日本では近年までサルノコシカケ科の菌体が桑寄生と呼ばれ,断面の赤黒いものを梅寄生,白いものを桑寄生と称して使用され,特にウメの木につくものが珍重されていました。

(神農子 記)