基源:ウコギ科(Araliaceae)のEleutherococcus gracilistylus又はE. giraldiiの根皮。

 「山でうんまいもんオケラにトトキ、まだうんまいもんウド、ワラビ」などと都々逸で歌われますが、春の山には魅力的な山菜が沢山あります。それらの中で、良く知られているウド、タラノキ、コシアブラ、ウコギなどは皆チョウセンニンジンと同じウコギ科の植物です。今回話題のウコギ属植物は落葉性の低木または高木で、50種が東アジアやヒマラヤに分布しています。日本には10種余りが自生し、よく見られるヤマウコギのほか、ヒメウコギ、エゾウコギ、オカウコギなどが一般的に知られている植物種で、以前はAcanthopanax属とされていました。通常5枚の小葉からなる掌状複葉でコシアブラ以外は低木です。若芽に特有の香りをもち、ウコギ飯など山菜として利用されますが、薬用植物としても重要な分類群です。

 五加皮の正品はウコギ属植物の根皮ですが、古来ウコギ属以外にも異なる科の植物に由来する異物同名品が多数存在しています。なお、ウコギ属を代表するウコギは中国原産の植物で、お寺などで植えられているのをよく見かけます。古い時代に薬用に移入されたものと考えられ、『本草和名』に「和名牟古岐」と記されています。ヤマウコギと良く似ていますが、葉脈の分岐部分にポケット状の薄膜がないことで区別できます。ウコギ属植物は互いに良く似ていますので、この機会に図鑑で調べてみて下さい。

 五加皮は『神農本草経』の上品に収載され、『名医別録』には強精強壮薬としての薬効が記載されています。李時珍は「この葉は五葉交加したものを良しとする。故に五加と名付け、また、五花と名付ける」といい、『名医別録』にも「五加皮は五葉のものが良し」とあります。その植物形態について、『図経本草』で蘇頌が「今は江淮、湖南の州郡にいずれもある。春苗が生え、茎、葉は倶に青く、叢を作す。茎は赤く、また藤、葛に似て、高さ三、五尺あり、黒刺がある。葉が五枚生えて簇を作すものが良い(中略)。三、四月に白花を開いて青子を結び、六月になると次第に黒色になる。根皮は黄黒、肉は白色で骨が硬い」などと記しているものはウコギ属植物のようです。続いて、「一説に、今使用するものには数種あって、京師、北地のものは大片で秦皮、黄蘗などに類し板のように平直で色が白く、気味は絶無で風痛を療ずるに頗る効があるが、その他には用いるところがない。呉中では野椿の根皮を剥いで五加としているが柔靭で味がなく(中略)。江淮に生じるものは、根は地骨皮に類し、軽く脆かで香が芬しく(中略)」などと記載していることから、五加皮には古来多くの異物同名品があったことが窺えます。しかし、『図経本草』附図から、正品は明らかにウコギ属植物の根皮および幹皮であることがわかります。

 現在の中国市場には主に北五加皮、南五加皮、紅毛五加皮の3種があり、北五加皮はガガイモ科のPeriploca sepium、南五加皮はウコギ科のEleutherococcus gracilistylus、紅毛五加皮はウコギ科のE. giraldiiに由来するとされます。

 南五加皮は乾燥して巻いた筒状になっています。外表面は灰褐色で横向きの皮目と縦じわがあり、内表面は淡黄色あるいは淡黄褐色、質はもろく折れやすく、においはわずかで味は少し苦く渋い。太く、長く、皮が厚く、においが良く、木部のないものが良品とされます。精油やタンニン、パルミチン酸やリノレン酸などの脂肪酸などを含有し、強壮、利水、祛湿などの薬効を期待して五皮飲、五加皮散などに配合されています。また、当帰や牛膝などを蒸留酒で煮た薬酒は五加皮酒と呼ばれ関節炎などに応用されます。一方で、P. sepiumに由来する北五加皮は巻いた筒状で、外表面は灰褐色または茶褐色で微紅を帯び、粗くごつごつしており、横に長い皮目があり、質は堅くもろいものです。強心配糖体のペリプロシンを含むことから、使用量が多いと中毒を起こすことがあるので注意が必要です。

 五加皮は日本では余り使用されない薬物ですので異物同名品に関する情報に疎いようですが、古来強壮薬として有名な薬物であり、中国産を入手し使用する際には原植物の違いに充分気をつける必要があります。

(神農子 記)