基源:レンプクソウ科(Adoxaceae)のコウライニワトコSambucus williamsii又はニワトコS.racemosa subsp. sieboldianaの茎を乾燥したもの。

 生薬名にはしばしば薬効に基づくものが見られます。「接骨木」もその一つで、名称で薬効が分かります。接骨木は『新修本草』の木部下品に初収載され、「味甘、苦、平、無毒。折傷を主治し、筋骨を続ぎ、風癢、齲歯を除く。浴湯にするが良い」とあり、骨折や筋肉の断裂などの治療に用いられてきました。『証類本草』引用の『唐本注』には「葉は陸英(クサニワトコSambucus chinensis)に似ており、花もまた似ているが、ただ樹になる。高さは一、二丈ばかりで、木の体は軽虚で心がなく、枝を斫って挿せば生える。人家にも植えてある。一名を木蒴藋と云う。至るところにある。」とあり、蘇頌も「接骨木は旧くはその産地を記していないが、今は京近くに皆ある。木の高さは一、二丈ほどで、花、葉が都て蒴藋、陸英、水芹などに類するところから、一名木蒴藋という。」といっています。『証類本草』の付図からもSambucus属植物であると考えられます。薬効に関しては、本来筋骨の損傷を治す薬物でしたが、陳蔵器が「根皮は主に痰飲に主効があり、水腫および痰瘧を下す。煮汁を服す。」と利尿効果を述べており、近年は利尿を目的として用いられることが多いようです。中国における主たる原植物は高さ4〜8mになる落葉低木のコウライニワトコSambucus williamsiiであったと考えられ、中国国内に広く分布し、しばしば庭園にも植えられています。

 日本では接骨木にニワトコSambucus racemosa subsp. sieboldianaが当てられています。里山を始め山地にごく普通に見られる低木で、葉は5〜7枚の小葉からなる大型の奇数羽状複葉です。春にやや大型の円錐花序に密に咲く細かな花は淡黄白色で目立ちませんが、やがて小型の赤い果実を多数つけるようになり、暗い山中でも目立つ存在になります。果実は食用には不向きですが、青森県の三内丸山遺跡から大量に出土し、酒を醸していたのではないかと一時話題になりました。なお、若い芽や花序は山菜として利用できます。薬用としては、古くから木質の茎を利尿薬として使用し、また枝は軽くて丈夫であることから骨折治療時の添え木にもされました。まさに接骨木です。本州、四国、九州に広く分布します。北海道には花序に細かな乳状突起があるエゾニワトコS. racemosa subsp. kamtschaticaが生え、アイヌ民族も風邪や腹痛の治療に内服し、打ち身などに湿布薬としてきました。なお、太くて軽くてやわらかい髄は「ニワトコの芯」と称され、植物を顕微鏡で観察する際の薄い切片を作る時にも利用されていますが、昨今はウコギ科のヤマウコギの髄を利用することが多いようです。

 Sambucus属植物は世界各地で薬用にされ、ヨーロッパのハーブ療法ではセイヨウニワトコS. nigraの花をElderflowerと称して発汗剤としてインフルエンザの特効薬とし、また気管支炎や花粉症の治療などにも応用されます。花を利用して扁桃腺炎のうがい薬や結膜炎用の点眼薬を製造し、また果実は緩下剤としても利用されます。アメリカではS. canadensisの樹皮を便秘、健忘症、水腫などに、根を腎臓、膀胱疾患、リウマチなどに、花を感冒、水腫などに用いています。台湾でもタイワンソクズS. formosanaは有名な民間薬で、根、根茎および茎を淋病や腫毒に用いてきました。

 なお、Sambucus属はエングラーやクロンキストによる以前の分類体系ではスイカズラ科(Caprifoliaceae)に組み入れられていましたが、最近のDNA解析によるAPG分類ではレンプクソウ科(Adoxaceae)に組み替えられています。

(神農子 記)