【地黄(ジオウ)】 平成4年4月15日号より
=鮮地黄(鮮生地)、乾地黄(生地)、熟地黄=
地黄は、八味丸、四物湯、キュウ帰膠艾湯などに配合される薬物で、ゴマノハグ
サ科のアカヤジオウ(
Rehmannia glutinosa Liboschitz var.
purpurea Makino)
または同属植物の根に由来しています。
地黄には炮製の異なる乾地黄(中国からは生地黄と称して輸入される)と熟地黄の
二種、中国にはさらに鮮地黄を加えた三種の地黄があります。
鮮地黄はなまの根で表面が肌色に近い黄赤色で、これは傷がつかないように掘り起
こしたものを乾いた土中に保存し、要時掘り起こして用います。
乾地黄と熟地黄はともに根を乾燥したものですが、熟地黄は乾燥する前に蒸すという
操作を行うことによって、独特の柔らかさと表面の光沢を出しています。
ところで、市場品熟地黄の色つやは、単に蒸すのみではなかなか出せません。生
薬の炮製に関する
書物によると、熟地黄の炮製法にはいくつかの方法があること
が分かります。
例)
1.蒸熟地黄:上下の蒸気の通過をよくするように工夫した蒸し器の中で6〜8
時間蒸し、一晩蒸らす。ひっくり返した後、再度4〜8時間蒸し、また一晩蒸ら
す。これを取り出し晒干する。
2.酒熟地黄:先ず生地を約12時間蒸し、一晩蒸らす。取り出し、火であぶ
って乾かす。酒と蒸し器内の汁をよくかき混ぜ、それに漬けて十分に吸収させ
る。その後再度24時間蒸して、一晩蒸らす。冷却後取り出し、乾燥する。
この他、蒸し器内の汁をかけながら、繰り返し蒸す方法や、酒を数時間毎に加え
ながら蒸す方法などもあり、産地によって、さまざまな炮製が行われます。
一方、中薬大辞典によると三種の地黄の薬味薬性および功用は次表のように異な
り、同じ植物に由来する薬物が炮製により応用範囲を広げています。
| 薬味薬性 | 功 用 |
鮮地黄 | 甘苦、寒 | 清熱、涼血、生津液。 |
乾地黄 | 甘苦、涼 | 滋陰、養血。 |
熟地黄 | 甘、微温 | 滋陰、補血。 |
生薬はこのように長い歴史の中で工夫されてきた炮製を受けることによって、毒
性、副作用を減らし、薬味、薬性を変え、また保存を容易にして応用範囲を広げ
てきました。したがって、我々は先人の知恵を受け継ぎ、よりよい炮製法を選択
あるいは開発して標準化し、生薬の有効利用と品質の安定化を図っていく必要が
あります。