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ショウバク
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セッコウ
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バクモンドウ
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生薬の玉手箱

生薬の玉手箱

 【柴胡(サイコ)】  平成5年7月15日号より

基源:ミシマサイコ Bupleurum falcatum L.またはその変種(セリ科 Umbelliferae)の根。

 柴胡は,神農本草経上品収載品で,「久しく服すれば,身を軽くし,目を
明らかにし,精を益す」と君薬にあげられています。柴胡はそれの入った
一連の処方箋が「柴胡剤」と総称される重要な漢薬の一つです。

 現在,日本薬局方の規定では,柴胡の原植物はミシマサイコ B.falcatum L.
またはその変種となっていますが,中国で使用されているのは同属植物の
B.chinense(中国名:柴胡)に基づく「北柴胡(柴胡)」,B.scorzonerifolium Willd.
(同:狭葉柴胡)に基づく「紅柴胡(南柴胡)」が主であり,また他に
B.mariginatum Wall.ex DC.(同:腹縁柴胡)に基づく「竹葉柴胡」など,原
植物は多種にわたっています。

 わが国では中国と同じものが産しなかったため,同属植物で非常に良く
似たミシマサイコが代用品として利用されました。ミシマサイコという名は,
伊豆の三島地方に集められたところからその名が付けられ,当時は三島
の宿に立ち寄った旅人は必ず買って帰るのが慣わしになっていたほど三
島の柴胡は有名でした。「三島柴胡」は伊豆の草原地帯を初めとして関東
から東海地方にかけて産出したものを指し,それに対して九州地方を初め
とする西方に産出したものを「鎌倉柴胡」と呼んでいました。どちらも薬用
に供されていましたが,現在では関東・東海地方にはまったく産せず,わ
ずかに九州地方で集荷されますが,それも和産柴胡として供給できるほ
どの量ではありません。

 柴胡の品質は,宋代には「蘆頭に赤い毛があって鼠の尾のようで,根が
1本で長いものがよい」とされていました。この記載は現在の中国産の野
生品によく一致します。また一色は「鼠の尾のような形をした細長い根で,
皮が赤黒色,内部が淡褐色で,味の苦い,かすかに良い香気のあるもの
がよろしい。其の他なるべく分岐していない真っ直な根で,内部の色の淡
い朽ちていない太いものを選ばねばならない。油臭いものや痩せた小さい
ものはよくない」としています。従来,日本産の柴胡は潤いがあって良質品
であると言われてきましたが,最近はほとんどが栽培品で,根はよく分岐
し外面黄褐色で,古来良品とされてきた形態には合致しなくなっています。

 柴胡剤としては,小柴胡湯,大柴胡湯などが有名で,わが国では近年
これら柴胡剤が,治療困難な肝臓病に多用され始めたことから柴胡の
需要が急増し,年々輸入量が増えています。現在では主に中国から輸入
され,野生品が主流ですが,産地によって,太さ,木質の度合い,色,香
りなどにずいぶんとバラツキがあります。おそらく先に書いたような原植物
の違いによるものと思われますが,輸入時の選品に苦労しています。

 また,日本や韓国では柴胡の栽培が盛んですが,柴胡の栽培研究は
1955年に始まったばかりでその歴史は新しく,まだ確たる方法は開発さ
れていないようです。一般には野生品の方が良品とされますが,栽培品
の品質も一定しておらず,硬くて潤いの少ないものがある一方,3年ほど
栽培したものでは外見は野生品より太くて充実していますし,またエキス
含量が野生品より多いものもあります。現在も摘芯効果や土壌の選択
など盛んに研究が行われ,また野生品と栽培品の薬効的な善し悪しに
ついても種々論議されていますが,これらの結論を得るには今少し時間
がかかりそうです。

 ところで,中国では古くから柴胡は銀州産のものが最良品であるとさ
れてきました。図経本草(宋代)に「銀州の物が勝る」と記載され,その
付図から当時の銀州産柴胡がセリ科植物であったことは疑いないよう
です。ところが,銀州柴胡は明・清時代に「銀柴胡」と名称を変え,ナデ
シコ科植物の根が用いられるようになり,柴胡とは薬効も異なった別の
薬物として独立したようです。「銀州柴胡」と今日の「銀柴胡」を混同しな
いように注意する必要があります。

(神農子 記)