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生薬の玉手箱

生薬の玉手箱

 【木通(モクツウ)】  平成7年01月15日号より

基源:アケビ Akebia quinata Decaisne またはその他同属植物(アケビ科 Lardizabalaceae)の蔓性の茎を、通例、横切したもの

 木通はアケビの木質の蔓であることはほんの少しでも生薬の勉強をした方には常識的な知識でしょう。アケビは全国どこにでもある身近な薬用植物です。野山へハイキングに行って、最初に勉強した薬草がアケビだったような気もします。さらに知識のある方なら、アケビにも葉が5枚のもの(アケビ)と3枚のもの(ミツバアケビ)があり、またその雑種とされるゴヨウアケビのあることをご存じでしょう。薬局方でその他同属植物とされる植物種です。いずれにせよわが国では木通はアケビの仲間であると疑いなく認識され、木通の基源についてはさほど問題はなさそうなのですが、実際はそうではありません。一歩海外に出れば木通といえども異物同名品だらけなのです。中国における異物同名品を列記しますと以下のようです。

 関木通 --- ウマノスズクサ科のウマノスズクサの仲間で茎が木質となる Hocquartia manshuriensis Nakai の茎で、一般に黄河以北及び山西省の一部で用いられ、吉林省が主産地とされます。

 准木通 --- 小木通、川木通などとも呼ばれ、キンポウゲ科のセンニンソウやボタンヅルの仲間 Clematis armandi Franch. などを原植物とする木質の茎で、四川省、湖南省を主産地とし、華南地区で用いられますが、他の多くの同属植物も利用されます。中国木通は華北地区を除いてはほとんどこれらであるとされます。

 白木通 --- これがアケビの仲間で、A.trifoliata Koidzumi var.austoralis (Diels) Rehder の木質茎です。湖北、湖南、江西、四川、広西、貴州などに産しますが、中国での市場性はほとんどありません。

 木通は最初『神農本草経』の中品に「通草」の原名で収載されました。このものはアケビの蔓であったと考えられていますが、木通の語源が「茎の両端が通じていて、一方を口に含んで吹くともう一方から気が出る」ことに起因していると陶弘景が記しているように、蔓性植物に広く共通する性質であったため、多くの異物同名品が生じることになったようです。即ち、一般に蔓性の植物は道管が太く、茎を切って一方から息を吹き込めば、乾燥した茎なら多端から空気が出てきます。また生の茎であれば最初水が出てきます。こうした性質から、蔓性植物はよく水分を通じる作用があるものと解釈され、利水薬として試されのでしょうか。

 また、原名が通草であったためか、草本植物の異物同名品もあります。通脱木すなわちウコギ科のカミヤツデ Tetrapanax papyrifera Koch の太い草質茎の髄で、白くてたいへん軽いもので、台湾省をはじめ南の地方で使用されています。通草の名の付いた異物同名品としては他にキブシ科やマメ科植物もあり、全体として木通の基源はずいぶんと混乱していることが分かります。

 以上の如く外国産の木通は基源が不確かで、わが国ではもっぱら自国産の野生品を採集して使用しています。主な産地は徳島や香川など四国地方で、また群馬、長野、鹿児島の諸県からも出荷されます。

 木通に限らず、蔓性植物の木質茎を利用する生薬は一般に冬期が採集時期です。これら「蔓もの」と呼ばれる生薬の採集は葉が枯れ落ちてしまってからがシーズンという訳です。山地にある種々の蔓性植物の中では、アケビの茎はとくに白っぽく目立っていますので慣れれば他の植物と容易に区別がつきます。中国で白木通と呼ばれる所以です。

 なお、アケビ属植物以外の多くの異物同名品の薬用の是非や薬効の強弱などについてはまだ未解決ですが、木通と通草については、木通は利水泄熱作用に勝れ、通草は淡滲利湿作用に勝るとされて使い分けがされています。

(神農子 記)