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生薬の玉手箱

生薬の玉手箱

 【紅花(コウカ)】  平成5年8月15日号より

基源:ベニバナ Carthamus tinctorius L.(キク科 Compositae)の管状花をそのまま、又は黄色色素の大部分を除き圧搾して板状としたもの。

 ベニバナは、非常に古くから、世界各地で栽培されてきた植物です。原産地は、中近東あるいはエジプトといわれていますが、現在では野生品をみることはできません。最も近縁の植物は、ベニバナに比べてさらに刺が鋭いC.oxacantha で、コーカサス、イラン、アフガニスタン、パキスタンなどに野生しています。

 ベニバナ(紅花)は染料植物として有名で、花(管状花)から取れる染料の色が、漢名や和名になっています。エジプトでは古くから重用され、ミイラを包んだ布帯が紅花で染められていたと言われています。一方、ベニバナは薬物としても古くから利用されており、紀元77年に書かれたとされるディオスコリデスの『薬物誌(ギリシャ本草)』に「KINIKOS」の名で記載され、またプリニウスの『博物誌』には「クネスコ」の名で記載されており、エジプト人が重用していたこと、食べる目的ではなかったこと、栽培されていたこと、野生種が2種類あったことなどが述べられています。当時は種子の搾り汁が、下剤、また乳汁分泌薬として使われていました。

 中国には張華の『博物誌』に「紅花」の記載がみられるように、3世紀にはすでにもたらされていました。また『金匱要略』に「紅藍花」の名がみられることから、導入後まもなく薬用に使用されていたことがわかり、ベニバナは染料植物としてのみならず、薬用としても世界各地に広がったようです。わが国にもたらされたのは朝鮮半島経由説と中国大陸から直接もたらされたとする説がありますが、推古天皇の時代、高麗の僧曇徴によって伝えられたとする説が有力なようです。

 ベニバナの花は、現在約30%が医薬品原料に供せられ、あとの70%が天然色素原料として使用されています。エジプトでは種子が下剤や乳汁分泌薬として用いられていたにもかかわらず、中国で花が婦人薬として利用されるようになったのは、サフラン(アヤメ科のサフランの雌蕊)との混同があったのではないかと考えられます。番紅花(吐番・西番の紅花)、また蔵紅花(西蔵の紅花)と呼ばれたサフランがあまりにも貴重で入手困難であったため、色、形ともに良く似たベニバナの花を、同類生薬として代用したことは十分に考えられることです。サフランを「紅花中の逸品」としたり「彼の地の紅藍花」とした記載もあり、少なくとも薬効的には紅花とサフランを厳密に区別していなかったようです。

 ベニバナには有刺と無刺の株があり、生薬の生産には有刺株を用いています。品質に関して、薬局方では「薬用としては開花初めの黄色の強い花弁を摘み、開花末になると赤色が強くなり、生薬には不適になる」と解説されています。一方、江戸時代前期の本草書である『大和本草』では、「開き初めの、黄色い物は採ってはいけない。数日たって、紅くなった物を採るべきである」としています。また、一色直太郎氏は「薬用には鮮紅色のごく新しいものがよろしい。年を経て暗紅色に変じたものはよくない」と記しています。俗に鮮紅色の物が良いとされているのだとしたら、開花後数日したものが良いのかも知れません。なお、染料用には開花初期の黄色鋳物を摘み、搗いて発酵させた後に水溶性の黄色色素を洗い出して丸くまとめ(これを紅花餅という)、これから燕脂(ベニ)を作っていました。局方ではこの紅花餅をもコウカとして規定していますから、この場合には開花初めに採集する必要があります。

 ベニバナは万葉集や古今和歌集に「末摘花」の名で歌われています。花が末枝から咲き、末枝(ウラエ)の花から順序に摘みとるので、万葉時代に末摘花(ウレツムハナ)とも呼ばれたものが、中世紀になって末摘花(スエツムハナ)と呼ばれるようになったそうです。

(神農子 記)