ホーム > 漢方・生薬について > 生薬の玉手箱 > 五十音順検索 【槐角と槐花(カイカクとカイカ)】
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生薬の玉手箱

生薬の玉手箱

 【槐角と槐花(カイカクとカイカ)】  平成31年1月10日号より

基源:マメ科(Leguminosae)のエンジュ Styphonolobium japonicum (L.) Schott (= Sophora japonica L.)の成熟果実(槐角)及び花蕾(槐花)

 日本にはイヌエンジュ、ハナエンジュ、ハリエンジュなど、エンジュの名を冠した植物が多数あります。エンジュは古い時代に日本にもたらされた植物で、種小名にはjaponica(日本の)とついていますが、もともとは中国北部の原産です。古くは恵爾須(えにす)と呼ばれ、これがエンジュに転訛したとされています。エンジュは重要な蜜源植物であり、また若葉は茹でると食べられ、茶の代用にも利用されてきました。豆果からは繊維を黄色に染める染料が得られる他、抽出物をアヘンの増量剤に用いていたとされています。中国では尊貴の樹といわれていますが、日本でも「延寿」に通じることから、めでたい木とされてきました。公害に強いため街路樹として植栽されている他、庭木としても好まれます。

 エンジュは高さ25メートルにもなる落葉高木で、葉は奇数羽状複葉で互生し、長さ15〜25cm。葉柄は基部がふくらんでおり、小葉は7-15枚、卵状長楕円形か卵状披針形、長さ2.5-5cm、幅1.5-2.6cm。円錐花序は頂生し、花は乳白色の蝶形花で長さ約1.5cm。萼は鐘形で5浅裂しています。開花期は7-8月、結実期は10-11月。

 薬用としては『神農本草経』の上品に「槐実」の原名で今の槐角が収載されています。『名医別録』には枝、皮、根の薬効をあげ、さらに『嘉祐本草』には「槐膠」および「槐花」の薬効を述べています。明代の李時珍は、「按ずるに、周禮の外朝の法に”三槐に面し三公これに位す”とあり、呉澄の註に”槐の意味は懐であって、人を此に懐き来すのである”とある。王安石の釈には”槐は黄中にその美を懐く。故に三公これに位する”とある」といっています。これらのうち、現在薬用として主に使用されているものは「槐角」と「槐花」のみです。

 槐角は円柱形で湾曲しておりサヤエンドウのような形をしています。種子と種子の間は萎縮し連珠様になっており、長さは1-6cm、直径は0.6-1cm。表面は黄緑色、褐色から黒褐色で、一方の背縫先は黄色。基部には常に果柄があり、果肉の質は柔らかく粘りけがあり、乾燥するとしわが寄る。においは微弱で砂糖を焦がしたような香りがします。味はやや苦く、中に1-6個の種子があります。種子は腎臓形で表面は光沢があり、褐色から黒褐色。種皮は革質で、子葉は2枚、黄緑色でかむと豆の生臭いにおいがします。大きくて長く、黄緑色で実が十分入っているものが良品とされています。一方槐花は、乾燥した蕾は卵形か長楕円形で、長さ2.5-5mm、幅1.5-2mm。外表は黄褐色か黄緑色で、少ししわがあって縮み、下部は鐘状の萼で、先端には不鮮明な5つの歯裂があり、短い柄のついているものもあります。上部がまだ開いていない花冠は大小不揃いで、萼と花冠の表面は白色の短毛でまばらに覆われています。質はもろく、においは弱く、味はわずかに苦い。蕾が大きく、萼が緑色で厚く、枝茎のないものが良いとされています。

 槐角にはゲニステイン、ソフォリコシド、ソフォラビオシド、ルチンなど多数のフラボノイドとイソフラボノイドが含まれており、特にルチン含量が高く、幼果に多く含まれます。同様に槐花もルチンを多く含んでおり、開花した花よりも蕾に多く含まれていることが知られています。

 槐角、槐花は止血の効能があり、鼻血、痔、性器出血、陰部湿疹等に用いられています。方剤として槐角は地楡、黄芩、当帰などと配合した槐角丸があり、槐花は荊芥、枳殻、地楡などと配合した槐花散があります。槐角、槐花はそれぞれ性味・効能など似た部分が多くありますが、涼血・止血の効能は槐花が優れており、瀉熱下降の力は槐角が優れているため臨床では症状に応じて使い分けられています。

(神農子 記)