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生薬の玉手箱

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 【山査子(サンザシ)】  平成14年02月15日号より

基源:サンザシCrataegus cuneata Sieb.et Zucc. やオオミサンザシCrataegus pinnatifida Bge.var. major N.E.Br. (バラ科 Rosaceae)の偽果。

 冬期に中国を旅行しますと,街角でサンザシの赤くて丸い実の数個が串刺しにされて売られているのが目立ちます.また,スーパーマーケットなどでは年中,果汁が甘酸っぱい丸い板状に加工されて売られていて,最近では日本でも手に入ります.また,消化を助けるという知識が大衆によく知れわたり,このものが食後に食されることも多いようです.サンザシの実はそれほど一般的な食品となっています。

 原植物のうち,サンザシ(中国名:野山査)は高さ2メートルほどの落葉低木で,オオミサンザシ(中国名:山査)は高さ8メートルほどになる落葉高木です。中国原産の植物で,サンザシはわが国にも江戸時代中期に導入されたとされます。

 サンザシが本草書中に収載されたのは『新修本草』が最初で,「赤爪木」の名で,「(木の)味は苦寒無毒。水痢,風頭を主治する。平陸に生じる。実の味は酸・冷・無毒。汁は水痢,風頭に服用し,瘡痒には身を洗う。小樹で,高さ五六尺」と記載されており,その後『本草図経本経外木蔓類』に「棠毬子」の名称で,「痢疾及び腰痛に効果があるが,他所(?州以外)では薬用にしない」と記載されました。 『日本薬局方外生薬規格』や『中華人民共和国葯典』では,原植物として2種類の植物が充てられていますが,上記本草書の記載からは,どちらかといえばサンザシが用いられていたと考えられます。李時珍も,「2種類があって,どちらも山中に生じ,高さ数尺のものは薬に用いられ,もう一種の高さ1丈に達するものは実が大きく色が黄緑で皮が渋く肉が虚している。後者も効果は同じだが実は採集されない」と記しています。後者はオオミサンザシのことと思われ,薬効的には同じでも,樹が高くて味も悪いのでも採集されなかったものと思われます。

 現在では,サンザシを南山査,オオミサンザシを北山査として区別しています。南山査の品質については「堅く,核が大きく,果肉は薄くて赤褐色,においはわずかで,味は酸味がありやや渋く,粒が揃い,色が赤く,堅いものがよい」とされ,採集後はそのままか餅状に潰して日干しされます。北山査については「弱い芳香があり,味は酸味があり,やや甘く,粒が大きく,皮が赤く,肉が厚いものがよい」とされ,採集後は薄片にして日干しされます。

 中医学では2種を使い分けることなく,消導薬(消食薬,消化薬ともいわれる)として,脾胃を壮健にして飲食の積滞を解消する薬物とされ,消食導滞剤としての処方「保和丸」中には,主薬として全体の3分の1以上の量が配合されています。その他六神曲や麦芽とともに丸剤とした「山査丸」や「山査片(餅)」なども同様の目的で用いられ,かつ一般市場で簡単に購入できるなど,食品としても広く利用されています。 サンザシは古くから利用されてきた薬用植物ですが,処方に用いられる機会が少なかったことから,元代に到るまであまり知られていなかったようです。おそらく,一部の地方で民間的に使用されていたものと思われます。なお,先述の「保和丸」は『丹渓心法』中にある処方で,著者は元代の朱震亨です。李時珍も「朱震亨が功を著録してから,遂に要薬になった」と記しています。

 サンザシの実が食されるようになった背景には,油を多量に食用する中国の食生活が影響していたのかも知れません。近年,わが国の食生活も様変わりして肉食や油料理が増えており,今後は我が国でも見直されるべき生薬のひとつかもしれません。

(神農子 記)