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生薬の玉手箱

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 【金銀花(キンギンカ)】  平成14年06月15日号より

基源:スイカズラLonicera japonica Thunberg (スイカズラ科Caprifoliaceae)の花蕾。

 スイカズラ由来の生薬は『名医別録』の上品に、「忍冬」の名前で「味甘く、温、無毒。寒熱による身腫を主治する。久しく服用すると身を軽くして、年を長くし、年齢を益す。十二月に採集して陰干する」と初収載されました。12月に採集されたというところから、当時は冬期に採集されたスイカズラの蔓性の茎が薬用に供されていたことが窺えます。

 原植物のスイカズラは、山野の日当たりのよいところに生える多年性のつる性植物で、和名「スイカズラ」は、細長い筒状の花筒の奥に蜜がたまっていて、花を採って吸うと甘いことに由来し、すなわち「吸い蔓(カズラ)」の意味です。また、漢名の「忍冬」は、冬になってもすべての葉が落ちないことに由来しています。さらにスイカズラの花を基源とする薬物名「金銀花」は、5〜6月にかけて2個づつ対になって咲く花が、最初は蕊、花弁ともに白いのですが、2,3日経過すると黄色く変化する結果、白と黄の花が混じって咲く姿に由来しています。

 昨今の中医学では「金銀花」と「忍冬藤」は、ともに清熱解毒薬に分類され、効能はどちらも同じであるとされています。しかし、現在処方に配合されるのは専ら「金銀花」であり、「忍冬」は古くから本草書に収載されていたにもかかわらず、現在では民間的に使用されているにすぎないようです。

 金銀花が配合される「銀翹散」「銀花解毒湯」「清腸飲」などは、清代に編み出された比較的新しい処方ですが、それ以前の「金銀花」の使用については、『本草綱目』附方の項に『外科精要』から引用した「忍冬圓」について、「消渇を治し、癰疽を予防し、根茎花葉皆用いることができる」、また『怪病奇方』を引用して「鬼撃身青で痛むものに金銀花一両を煎じて飲む」と記されており、『本草綱目』の中では圧倒的に多い「忍冬」の使用例に比して「金銀花」の使用例の紹介はほんのわずかです。 李時珍は「(忍冬は)昔は風を治し、脹れを除き、痢を解し、邪を遂う要薬であったが、後世では腫れを消し、毒を散じ、瘡を治療する要薬とされている」と、時代とともに効用が変化したことを記しています。忍冬の藤に替わって金銀花が使用され始めたのはこの頃であったのかも知れません。採集しやすい蔓に代わって、採集に手間のかかる花があえて使われはじめたことには何らかの理由があったものと思われます。

 『中華人民共和国葯典』(2000年度版)では、忍冬藤の効能は清熱解毒、疏風通絡、金銀花の効能は、清熱解毒、涼散風熱、と若干の違いがあるように記されています。臨床応用例を見ると、金銀花は急性の炎症や細菌性疾患によく使用されています。わが国では余り使用されない生薬ですが、中国では扁桃腺炎などを伴う感冒に用いる中薬製剤によく配合されています。また、中国の生薬市場でも常見する薬物で、庶民的な薬物であるとも言えます。

 中国では金銀花の原植物として、スイカズラ以外の同属植物Lonicera hypoglauca Miq.、L.confusa DC.、L.dasystyle Rehd.なども使用されています。その中で、スイカズラ由来の金銀花には毛が多いことで、他の同属植物に由来する商品と区別できます。

 生薬としての金銀花は、花がまだ開いておらず、黄白色で大型のものが良品とされます。一般に花に由来する生薬は新鮮なものが良品とされ、経年して色あせたり褐色がかったものは品質が劣るとされます。

(神農子 記)