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生薬の玉手箱

生薬の玉手箱

 【釣藤鈎(チョウトウコウ)】  平成17年07月15日号より

基源:カギカズラUncaria rhynchophylla Miquel, U. sinensis Haviland 又はU. macrophylla Wallich (アカネ科Rubiaceae ) の短枝をつけた鈎状の棘。

 釣藤鈎は頭痛,眩暈,のぼせ,夜泣き,不安,不眠などの治療を目的に釣藤散,七物降下湯,抑肝散などに配合される生薬です。釣藤鈎を主薬としたそれらの処方は,臨床において比較的高い頻度で使用されています。また,近年の研究では脳血管障害性痴呆症に対する有用性が認められるなど,今後さらに重要視される生薬のひとつとなることが予想されます。

 釣藤鈎は最近まで日局収載品でなかったため,中国からの輸入品の原植物の特定もあいまいに流通されてきました。しかし,2002年12月に第14改正日本薬局方に追補され,上記原植物3種類および,総アルカロイド(リンコフィリン及びヒルスチン)0.03%以上を含む事項が規定されました。

 第14改正日本薬局方に追補収載されるに先立ち,余村ら(2004)によって,釣藤鈎中のアルカロイド含量のHPLCによる定量法と標準物質についての規格設定が行われました。

 釣藤鈎のアルカロイド組成は原植物や産地によって異なることが知られています。Uncaria rhynchophylla , U. macrophylla には,主にリンコフィリン,コリノキセインなどのオキシインドール型アルカロイドが,U. sinensis にはヒルスチン,ヒルステインなどのインドール型アルカロイドが含有されています。そこで,釣藤鈎として上記3種を規定するには,アルカロイドについて3種を包括するような規定が必要とされました。

 HPLCの分析条件は従来の方法が参考され,試料調製時の乾燥処理については,未乾燥品と105℃で6時間乾燥処理を施したものの定量値(未乾燥品は乾燥物に換算)がほぼ一致すること,試料の粒度については定量値の再現性などから「中末」が適すると判断されました。抽出時の溶媒としてはメタノール/希酢酸混液(7:3)が適していることがわかり,本溶媒中でのリンコフィリンとヒルスチンの安定性も確認されました。抽出方法については,浸透抽出,還流抽出,超音波抽出のいずれでも同様な定量値を示し,抽出時間は1回30分以上で3回抽出することにより,最良の結果が得られました。

 HPLC分析条件: カラム;ODS(内径4.6mm,長さ25cm,5μm),カラム温度40℃付近の一定温度,移動層;酢酸アンモニウム3.85gを水約200mLに溶かし,酢酸10mLを加え,水を加えて1000mLとした液にアセトニトリル350mLを加える,流量;リンコフィリン保持時間が17分になるように調整。

 なお,リンコフィリン標準溶液については調製後2日以内に用いる必要のあることが明らかにされました。上記の定量法については,真度,精度,特異性,直線性,頑健性などが検証された結果,適切な方法であることが証明され,異なる施設で行った69検体の総アルカロイド量は,平均値で0.079%,標準偏差0.026%,最大値0.172%,最小値0.038%でした。

 また,リンコフィリン及びヒルスチンの規格設定に際して,性状(色・形状・溶解性・融点),吸光度,純度試験,乾燥条件,水分などが検討され,リンコフィリンは白色の結晶又は結晶性の粉末で,エタノール又はアセトンにやや溶けにくく,水にはほとんど溶けず,融点は205〜209℃,メタノール/希酢酸混液(7:3)に溶解して検出波長245nmの吸光度を測定した結果は平均488.3,またシリカゲルで24時間処理することで無水物として扱えることが明らかになりました。ヒルスチンについては,白色〜淡黄色の結晶又は結晶性の粉末で,融点は約100℃と設定されました。

 釣藤鈎の使用部位について,日局では「通例とげである」と規定されています。『中華人民共和国葯典』においては,「帯鈎茎枝」と表記されていますが,古来の薬用部位については鈎,皮部などいくつかの異なる説があります。また,近年の成分研究では鈎よりも皮部にリンコフィリンが多く認められたとする報告もあり,薬用部位と成分との関係についてはさらなる検討が望まれます。

(神農子 記)