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生薬の玉手箱

生薬の玉手箱

 【玄参(ゲンジン)】  平成29年8月10日号より

基源:ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)の Scrophularia ningpoensis Hemsl. の根を乾燥したもの。

 丹参の回でも紹介しましたが『本草綱目』に「五参はその五色がそれぞれ五臓に配するものだ。故に人参は脾に入るから黄参といい、沙参は肺に入るから白参といい、玄参は腎に入るから黒参といい、牡蒙(アキノタムラソウの根とされる)は肝に入るから紫参といい、丹参は心に入るから赤参という」のように五行に関連付けた記載があります。玄参の名称については同じく『本草綱目』に「玄とは黒色のことである」とあるように黒い人参を示しています。

 一方、玄参のどの部分が人参に似ているのかについては議論の余地があるようです。『神農本草経集注』には「茎が少し人参に似ているから参なる名があるのだ(中略)茎は人参に似て長く太く、根は甚だ黒い」とありますが、その後の唐代の『新修本草』では「茎は一向に人参には似ていない」と、これらの記載を否定しています。実際、現植物のScrophularia ningpoensisの茎を始めとする地上部は人参の原植物であるPanax属植物とはかなり異なっていますから、玄参の名称は色や薬効を人参と重ね合わせたと考えられます。『開宝本草』では「茎は四角で太く、高さは四五尺あり、紫赤色で細毛がある。葉は掌ほどの大きさで尖長だ。根は生では青白く、乾けば紫黒色となり、新しいものは潤いがあって滑らかだ」とあり、『図経本草』でも「葉は脂麻(ごま)に似て対して生える。また槐、柳のように尖長で鋸歯があり、茎は細く青紫色だ。七月青碧色の花を開き、八月黒色の子を結ぶ」と、S. ningpoensisの特徴に合致する記載内容が書かれています。

 玄参の原植物について、かつて小野蘭山は日本にも自生するゴマノハグサS. buergerianaを充て、その乾燥根に由来する日本産玄参が流通したこともあったようです。現在は中国の浙江省、四川省、重慶市、陝西省などで生産されるS. ningpoensisが輸入されています。高さ 60〜120 cm の多年生草本で茎は直立します。卵形または楕円形の葉が対生し、茎は4稜があります。花は暗紫色でまばらな円錐形の総状花序になります。冬に茎葉が枯れた時に収穫し、ひげ根や土砂等を除去した後に乾燥します。生薬は円柱状で、上部が太くて下部に向けて次第に細くなるか或いは中間部分がやや太くなっています。長さは10〜20 cm、直径は 1.5〜3.0 cm です。表面は灰黄色、灰褐色、質は堅く折れ難い形質です。太くて質が堅く断面の色が真っ黒なものが良質とされ、断面にはやや光沢があります。

 玄参は古来、足の少陰、腎経の君薬とされてきました。『本草綱目』には「腎水に傷をうけて真陰が安定を失い、陽が孤燭となって據(よりどころ)無く、発して火病となったものには、水を壮にして火を制するのが法則であるから、この場合における玄参の効力は地黄と同一である。」とあります。さらに張元素を引用して「玄参なるものは枢機(最も大切)の剤であって、諸気を支配し、上、下を清粛して濁らしめぬものだ。風薬中に多く用いる」とあります。玄参の主治は、突然に起こる中風、傷寒による発熱、手足が重く狂邪に満たされ、ぼんやりして人の顔がわからなくなる、胸中の気を除く、水を下す、煩渇を止める、五臓を定める、などです。『活人書』の「玄参升麻湯」は升麻、甘草を配して発斑咽痛を治すのに用い、『温病條辨』の「増液湯」は麦門冬、生地黄(日本の乾地黄)を合わせて熱傷陰津を治しています。ここで玄参と乾地黄はいずれも滋腎の効能を有する点で共通していますが、乾地黄は甘潤で滋養の力が玄参より強く、玄参は苦鹹降泄し降火の力が強く、乾地黄は降血不足に適し、玄参は陰虚火盛に適するほか解毒にも働き瘰癧瘡毒にもよく用いるとされ、それぞれ使い分けがなされています。同時に、玄参の禁忌として、脾胃に湿のある者や脾が衰弱して軟便の者は服用してはならないことを知っておく必要があります。

 

(神農子 記)